業務の構造を理解しよう【RPAシナリオ設計】

RPA設計

RPAを導入したけれど期待したような開発が進まない…。

という人に向けて、「定型業務の構造」について解説します。

定型業務の構造」を理解できていないことが、RPA開発が進まない原因になっている可能性があるからです。

もう一度、RPAの定義を確認しましょう。

『RPAは定型業務をソフトウェアによって自動化を図るという概念

したがってRPAシナリオを作成するためには定型業務の構造を定義づけて理解することが必要です。

【注意】業務という記述について
本記事の中で「業務」と記述している場合、「定型業務」のことを意味しています。「定型業務」以外の不定期に行われる業務については、自動化の対象外なので触れていません。

この記事に出会ったのを機会に、是非「定型業務の構造」を知って、RPAシナリオ作成に役立ててください。それでは、どうぞ!

この記事を書いた人
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こさい
こさい

(株)完全自動化研究所代表のこさいです。

1) エンジニア歴25年超。開発から業務改善まで幅広く経験してきました
2) 複数の企業においてRPAのコンサルティングを行っています
3) RPA関連の書籍を5冊出版しています

  1. オープンソースで作る!RPAシステム開発入門
  2. 実務者のための失敗しないRPAシナリオ設計入門
  3. UiPath業務自動化最強レシピ
  4. WinActor業務自動化最強レシピ
  5. Power Automate for desktop業務自動化最強レシピ

現在はChatGPTとPower Automate for desktopの書籍を執筆中!

RPAシナリオ作成のために業務の構造を理解しよう

業務は図1の階層構造で説明することができます。

「業務」「業務プロセス」「サブプロセス」「アクション」(※1)によって構成されます。

※1)「業務」「業務プロセス」「サブプロセス」「アクション」という名称は僕が使っているもので、明確な決まりがあるわけではありません。

図1:業務の階層構造

めーたん
めーたん

業務って、階層構造になっているのね!

そうだよ!上から順番に解説していくよ

こさい
こさい

業務

こさい
こさい

最初は「業務」だよ。一番上の階層だね。業務の特性をみてみよう!

業務の特性

業務には2つの特性があります。

業務の2つの特性
(1) 目的を持ち繰り返し行われる
(2) 「インプット⇒処理⇒アウトプット」の構成を持つ
(1) 目的を持ち繰り返し行われる仕事の単位

業務は「目的を持って繰り返し行われる仕事」のことを指します。分解して説明します。

「目的を持つ」

目的を持つということは、成し遂げるべき状態を持つということです。

例えば「売上を上げる」「コストを削減する」「情報を共有する」などです。

「繰り返し行われる」

業務は日常的に繰り返し行われるものであり、一度行って終わりではないという特徴を持ちます。繰り返す中で改善し精度を高めることが求められます。

めーたん
めーたん

一度っきりの仕事は「定型業務」とは呼ばないのね

僕の定義では定型業務とは呼ばないよ

こさい
こさい
(2)「インプット⇒処理⇒アウトプット」の構成を持つ

もう一つの特徴は、必ず「インプット⇒処理⇒アウトプット」という構成を持つ独立した仕事であるということです。

したがって、どの業務も表1の構成にまとめることができます。

表1:「インプット⇒処理⇒アウトプット」の構成

項目

内容

業務名

業務名称

インプット

システム名、ファイル名やデータ名

処理

処理名

アウトプット

システム名、ファイル名やデータ名

めーたん
めーたん

表にまとめられるとわかりやすいね!

「内容」部分を穴埋めすれば、業務を整理できるよ

こさい
こさい

例として、基幹システムからダウンロードした売上データを使って、売上集計表を作成し、関係者に配信する業務を考えてみましょう。
業務名は「売上集計表配信業務」としました。

インプットは基幹システムからダウンロードした売上データです。これはCSV 形式のファイルとします。
この売上データを以下のようにExcelで加工します。

  1. 売上データと担当者マスタを突合する
  2. 担当者で集計し、売上金額の合計を計算する
  3. 罫線、背景色で見やすく加工する
  4. 「売上集計表」として保存する

この売上集計表はメールで関係者に配布します。

「売上集計表配信業務」の内容を表1に書き込むと、表2になります。

表2:業務の概要

項目

内容

業務名

売上集計表配信業務

インプット

基幹システムの売上データ、担当者マスタ

処理

売上データ、担当者マスタを突合し、売上金額の集計を行い、売上集計表を作成する

アウトプット

売上集計表

業務プロセスと業務フロー

業務は複数の業務プロセスによって構成されています(図2)。

業務プロセスの「流れ」が業務フローであり、分かりやすく図式化したものが業務フローチャートです。

図2:業務の構造

めーたん
めーたん

業務フローってよく聞くけど、業務プロセスの流れだったんだね!

例として、前述した売上集計表配信業務を考えてみましょう。

この業務は3つの業務プロセスによって構成されています(図3)。

図3:売上集計表配信業務の階層構造

業務プロセスとサブプロセス

業務は複数の業務プロセスによって構成されています。

こさい
こさい

業務プロセスについて詳しく見ていきましょう!

業務プロセスも、業務と同様に「インプット⇒処理⇒アウトプット」を持つ独立した仕事の単位と捉えることができます。

業務プロセスもまた複数の「サブプロセス」とその「流れ」によって構成されています(図4)。

図4:業務プロセスの構造

めーたん
めーたん

業務プロセスも業務と同じ構造だね!

前述した売上集計表配信業務を例として具体的に解説します。

[売上データ取得]プロセスは図5のように、3つのサブプロセスまで分解することができます。

図5:[売上データ取得]プロセスの階層構造

たった3つの業務プロセスで構成される業務ですが、掘り下げていくと多くのサブプロセスが見えてきました。

本記事では省略しますが、実際には[売上データ取得]プロセスの他2つの業務プロセスについても掘り下げないといけません。

サブプロセスとアクション

こさい
こさい

最後にアクションについて見ていきましょう!

「業務を可視化する」という目的だけであれば、サブプロセスまで掘り下げれば十分です。

しかし、ロボットを開発することを考えたら、もう一段階掘り下げないといけません。

つまり、業務の一番底まで手を突っ込まないといけないということです。

めーたん
めーたん

アクションって具体的にはどんな作業なの?

作業の最下位レベルだから、例えば次のような作業だよ

こさい
こさい
  • ボタンをクリックする
  • 検索ボックスに「〇〇」と入力する
  • Excelファイルを開く

さらに具体的に理解するために、前出の[ログイン]サブプロセスをさらに分解してみます。
サブプロセスは複数の「アクション」で構成されています。
[ログイン]サブプロセスの階層構造を図6に表します。

図6:[ログイン]サブプロセスの階層構造

まとめ

これで、業務の構造の解説は終了です。

こさい
こさい

もう一度、図7で業務の階層構造を確認しましょう

図7:業務の階層構造

めーたん
めーたん

この階層に従って業務を分解してみるわ!

RPAシナリオを開発する前に業務の構造を整理することで、RPAシナリオも整理されます。

整理されたRPAシナリオを開発すると様々なメリットがあります。

RPAシナリオを整理するメリット
(1) 作成されたRPAシナリオが読みやすいため、バグが少ない
(2) RPAシナリオの型が共通化されるので、保守メンテが容易
(3) 知識が共通化されるので、チームでの運用がスムーズになる

業務構造をよく理解してRPAシナリオ開発に活かしてください。