あなたもハマる?RPA開発5つの落とし穴

本記事ではRPAの開発に失敗するパターンを5つに分けて解説する。各失敗パターンに対して「どうすればよいか」も示しているため、「RPA導入に失敗した経験がある」あるいは「これからRPAを導入するが失敗したくない」と考える読者は参考にしてほしい。では、始めよう。

RPA開発における5つの落とし穴

1 開発することができない

IT会社の協力のもとPOC(Proof of Concept:概念実証)を行い、3業務の自動化に成功。成功を受けRPAツールを導入したが、半年経ってもシナリオが増えていない。


RPAは「ロボット」と呼ばれるが、導入直後に勝手に動くわけではなく、業務に合わせたシナリオの構築が必要である。ベンダーはノンプログラミングでシナリオ設定ができるため、現場の実務者でも自動化可能と説明するが、実際には容易ではない。

なかには「自動車を買う感覚」でRPAを購入し、すぐ使えると誤解する例もあり、その場合は悲劇となる。

非エンジニアの実務者にRPAツールを渡してもシナリオが1本も作れないことがある。ヒアリングすると次の声が挙がる。

  1. 何を作ればよいかわからない
  2. 何から始めればよいかわからない
  3. 時間がない

多忙な実務者は自業務以外を一から学習する時間を取りにくい。またプログラミング未経験者にとって開発画面を触るハードルは高い。結果としてRPAツールが導入されたまま放置されるケースも多い。

情報システム部門がRPA導入を主導しても、業務理解が浅ければ開発は進まない。現場に「RPA化できる案件を提案してほしい」と呼び掛けても、「何を自動化すべきかわからない」という理由でRPA案件は集まらないのが現実である。

2 開発効率が悪すぎる

自動化したい業務は把握し、RPAツールの使い方も学んだ。しかし1本目のシナリオ開発に1か月以上を要し、2本目も同様に時間がかかった。工数がかかりすぎるため手作業のほうが早い。


シナリオを効率的に作れず、1件ごとの自動化に膨大な工数が発生。「結局手作業のほうが早い」と結論づけて諦める失敗パターンである。

技術力が足りない

開発技術不足により時間がかかり、導入を断念する例が多い。書籍や研修で基礎を固め、疑問点を相談できるエンジニアを確保することが解決策となる。さらに開発速度を高めるにはチーム開発が不可欠で、そのためには以下の知識が必要である。

  • 共通処理のライブラリ化
  • ソース管理
  • 設計書作成

業務整理ができていない

RPA初心者はレコーディング機能付きRPAツールを手にすると、業務整理を省いて自動化できると誤解しがちである。その結果、「スパゲッティシナリオ(スパゲッティの麺のように複雑に絡み合ったシナリオ)」が生まれ、再利用が困難となる。毎回同様のシナリオに膨大な工数を費やす悪循環に陥る。

解決策 — 業務整理とシナリオ設計を徹底すること。

3 現場が混乱する

RPA導入により現場が混乱するパターンである。

RPAがすぐ止まる

基幹システムからデータ抽出し帳票を作成するシナリオ10本中7本が突然停止し、業務が大混乱に陥った。


シナリオが頻繁に止まると「使えない」と判断され開発が頓挫する。停止要因は大別して(1)例外、(2)変化の二つである。

  • 例外 — 必要ファイルの削除、対象アプリのメンテナンスなど。
  • 変化 — OSアップデートでUI認識不能、組織変更による業務変更など。

これらはRPAに常に付きまとうため、止まらないRPAを実現するにはエラー処理の知識と、停止を前提とした設計が必須である。

エラーが起きても止まらない

売上日報を自動配信するシナリオで論理エラーが発生、誤った売上が社内に配信された。


論理エラーはシナリオが停止しないため発見が遅れる。財務諸表など基幹データを扱う場合、致命的なリスクとなる。

4 統制がとれない

RPAの問題の多くは開発後の運用で発生する。ここでは次の3点を挙げる。

  1. 野良ロボットのリスク
  2. メンテナンス不能
  3. シナリオ引継ぎ不能

野良ロボットのリスク

どの端末でRPAツールが動いているか把握できず、ブラックボックス化・不正リスクが生じる。

メンテナンス不能

シナリオ開発者が不在、または「スパゲッティシナリオ」である場合、例外・変化への対応が困難となり運用停止に至る。

シナリオの引継ぎ不能

シナリオが担当者に属人化すると、人事異動時に引継ぎが不能となり、標準化どころか属人化を強化する結果となる。

5 費用対効果が出ない

RPAは小規模なら安価に始められるが、台数増加とともに費用が膨らみ、効果を把握できなくなる。

24時間365日稼働の壁

パソコン操作型RPAは画面変化やポップアップで停止しやすい。24時間稼働にはジョブ管理と運用監視体制が必須である。

意外に費用がかかる

1台10万円/月のライセンスを10台導入すれば月額100万円。業務数に対しロボが不足しやすく、開発用ライセンスも必要となる。

無駄なサブスクリプション費用

利用実態を把握しないままインストール台数分の費用が発生し続けるケースが多い。

失敗の根本原因

RPAはプログラミング言語を用いた開発より簡単だが、非エンジニアが知識ゼロで成功できるほど易しいわけではない。条件分岐や繰り返し、日付計算などプログラム基礎の理解は不可欠である。また現行業務を無批判にロボット化すれば余計な工数がかかる。結局のところ、適切な業務整理とITスキルが求められる。

RPA開発を成功させるには

RPA開発に必要な最低限の知識を習得し、失敗パターンを回避するために、拙著『実務者のための失敗しないRPAシナリオ設計入門』を参照してほしい。