本当にAIで需要予測できるか?

「本当にAIで需要予測できるか?」これをちょっと考察してみたいです。

この場合の「需要予測」というのは、小売業の場合、店舗ごと商品ごと日ごとの販売数を予測できるのか?ということです。

会社全体とか、ある商品全体とかなら予測はできると思います。
それは別にAIじゃなくても、ほぼほぼできます。
「全社の売上が前期の95%くらいだな」「この商品は人気が上がってきたから、前期比110%は売れるだろう」とかは、日々の仕事を普通にしていれば、だいたい当たりますから。

そうじゃなくて、店舗ごと商品ごと日ごとの販売数を予測するのは普通ではできません。

でも、「AIで」というのは、商品ごとの特徴点を複数検出して、過去に販売された商品群の中から特徴点と類似しているものを見つけ、その販売傾向から予測する、みたいなことじゃないかと思います。
これなら、もしかしたら店舗ごと商品ごと日ごとの販売数をある程度の精度で予測できるんじゃないか?という希望です。
実際、そういうことをセールスしている企業もありますよね。

これは、実際は試してみないとわかりません。
わかりませんが、ひとつ気になることがあります。

それがゆえに、僕はAIだろうと何だろうと需要予測はできないんじゃないか、と思っています。

その気になることとは、ベストセラー「ザ・ゴール」の小売業版である「ザ・クリスタルボール」の中で「未来を正確に告げてくれるクリスタルボールはない(つまり、需要予測は不可能である)」と論じられていたことです。

本のテーマは今回の記事のテーマと同じです。

仕入れる量と売れる量のミスマッチって、どうしようもないことだと考えるのに、私たち慣れ切ってしまってるじゃない。販売予測は不正確だし、補充時間は長いでしょ。だから、一方で品切れを起こして、他方で在庫を余らしていても、どうにもならないことだって思ってたの

カオス理論によると、ある特定の店の、ある特定のSKUの需要を正確に予想するのは、1か月後の天気を的中させるのと同じくらい当てにならないの

まず、前提の段階でAIによる需要予測の話とすれ違っていますね……。

こういう場合の解決策にも答えを言っています。

ミスマッチの解決策を考える前に、まず概念的なフレームワークをもっと理解しないといけない

どういう風に視野を広げて、フレームワークを理解するか?

  • まず店舗ごと商品ごとの販売予測は難しいことを認める
  • 大きな単位で予測するほど予測精度は高まる、という当たり前のことを認める

ということですね。

だから、精度の一番高い所で予測する。つまり、本社倉庫に在庫を集中させ、そこの在庫を予測しましょう、ということですね。

そして、予測精度の低いところ(つまり店舗)に素早く移動させれば、欠品と過剰在庫を防ぎやすいでしょ、というわけです。

とてもシンプルで理にかなっていると思います。
僕は、この考え方を応用した発注数算出システムを実際に作って、顧客企業内で運用しています。

【RPA事例】定番商品の欠品を防ぎ売上を上げる|需要予測が出来ない商品の発注数算出システム

実際、かなりうまく行っています。
もちろん、現場の人たちの協力がないと成り立ちませんので、システムのせいだけではありませんけど。

加えて、もう1つ予測が難しいだろうな、という点を書いておきます。

中小の小売業というのは、思った通りに仕入できるわけではないんですよね。

ロット単位とか、カート単位とか、ある単位に達しないと発注できないルールがある商品があります。
さらに、「このメーカーの商品は1商品ごとに何ロット以上じゃないとダメで、かつ全体で何カート以上じゃないといけない」とかもあります。

卸側に在庫がない場合だってあるので、機械的に発注することはできないんです。

だから、欠品することが分かっていても発注できなかったり、過剰になってしまうことが分かっていても発注しておかないといけなかったり、ということもあります。

さらにさらに、、食品だったりすると「賞味期限」もあります。

賞味期限が切れそうになると、値下げして売り切らないと損になってしまうので、段階的に値下げ販売します。そうすると売上数は上がります。
こういうのも、AIに取り込まれてしまうわけですよね。

在庫が100残っているとデータ上はなっていても、賞味期限が切れた商品が混ざっていたら、その分は販売できませんし…。

こういうのは、現場のスタッフだったり、店長の資質や頑張りによるところも大きいです。
もちろん、マニュアルを整備したり、教育したり、というのは行っていても、です。

つまり、「データ」に反映できていない現実がたくさんあるのが、中小企業の現場なんです。

まぁ、そういう「いろいろ」も含めて、AIが予測モデルを作ってくれる、というならOK。
僕自身、「本当にできるのかな?」と思いつつ、「試してみたい」と思います。

そういうチャンスに遭遇できそうなので、変な予断は持たずに望みたいと思っております。では。

コメント ログインすると書き込めます