データの識別【PAD×Excelベストプラクティス】

Power Automate for desktop(PAD)を活用してExcel業務を自動化する際、データの識別が適切に行われているかどうかが成功のカギを握ります。データに一意の識別子があることで、検索や更新がスムーズに行え、処理の安定性が向上します。本記事では、PADと相性の良いデータの識別方法と、適切なデータ管理のポイントを解説します。

1. 自動化しやすいデータの識別方法

1-1. 一意のキー(ID)を持つ

概要:各データ行に一意のIDを設定することで、特定のデータを容易に識別できる。

ポイント

  • ユニークなIDを設定する(例:注文ID、顧客IDなど)
  • 英数字の組み合わせでわかりやすくする
  • 一貫した形式を維持し、IDの重複を避ける

PADでの活用

  • データの検索や更新処理が高速化
  • 一意のIDを基にデータの抽出・フィルタリングが容易

1-2. 連番や一意のコードを活用

概要:手動でIDを付与するのではなく、システムが自動で連番や識別コードを生成することでミスを防ぐ。

ポイント

  • オートナンバー機能を活用する(Excelの「フィルハンドル」を使って連番を入力する方法やSQLの「IDENTITY」など)
  • IDのフォーマットを統一する(例:「CUST-0001」など)

PADでの活用

  • 自動で連番を生成し、データの管理が容易に
  • IDを基に、特定のデータを抽出する処理が確実に動作

1-3. 一意の組み合わせキーを活用

概要:一意のIDがない場合、複数の列を組み合わせてキーとして活用する。

ポイント

  • 注文番号+日付、顧客ID+商品コードなどの組み合わせを活用する
  • 重複しないように管理する
  • データの並び順を固定して、検索を容易にする

PADでの活用

  • 条件付きでデータの照合が可能に
  • キーを組み合わせた検索で特定のデータを抽出

2. 自動化しにくいデータの識別

2-1. 一意のキーがない

1. データの検索が困難になる

例:
顧客リストに「氏名」だけでデータを管理している場合、「田中太郎」が複数人いると、どの田中太郎が目的のデータなのか判断できなくなる。これにより、Power Automate for desktop(PAD)でデータを検索する際に、意図しない行が取得される可能性がある。

影響:

  • RPAが誤った顧客情報を取得する
  • データの特定に時間がかかる
  • 検索やレポート作成時にエラーが発生

2. データの更新時に誤ったレコードを上書きする

例:
注文データの管理で「注文番号」を設定せず、商品名や日付だけで注文を管理している場合、同じ商品を同じ日に注文したデータが複数存在すると、RPAがどの注文データを更新すればよいのか判断できず、誤ったデータが上書きされる可能性がある。

影響:

  • 意図しないデータの上書きが発生し、履歴が不正確になる
  • 顧客対応時に誤った情報を提供するリスクが高まる
  • データの復元が困難になる

3. 重複データが発生しやすくなる

例:
売上データを「商品名」と「売上日」だけで管理している場合、同じ商品が同じ日に複数回販売されたときに、売上が二重計上される可能性がある。

影響:

  • 集計結果に誤差が生じ、売上レポートが正しく作成できない
  • 重複データの手作業での確認・修正が必要になり、業務負担が増大する
  • RPAが意図しない重複データを処理し、エラーが発生する

4. データの結合・統合が困難になる

例:
取引データと顧客データを統合する際に、「顧客ID」が設定されておらず、氏名のみで管理していると、異なる取引データを正しく結びつけることが難しくなる。

影響:

  • RPAが異なるデータセットを正しくマッチングできず、分析の精度が低下する
  • 取引履歴を顧客ごとに整理するのが困難になり、マーケティングや売上分析に影響が出る
  • システム間のデータ連携がスムーズに行えず、業務の効率が低下する

5. エラーチェックやデータの検証が難しくなる

例:
従業員データに一意のIDがない状態で、「氏名」や「部署名」だけで管理していると、異動や名前の変更が発生した際に、過去のデータと現在のデータの整合性を確認するのが困難になる。

影響:

  • データの改ざんや重複を防ぐチェックが機能しなくなる
  • 異動や部署変更時に誤ったデータを更新するリスクが高まる
  • 監査時に正確なデータ履歴を提供できない

2-2. 手作業でIDを入力

  • 手作業で入力すると、重複や入力ミスが発生しやすい
  • 途中で変更される可能性があり、一貫性を保つのが難しくなる

2-3. データがランダムな順番で並んでいる

  • 一貫したルールがないと、RPAのデータ取得や検索に影響が出る
  • 並び順が変更されるたびに、自動化スクリプトを修正する必要が生じる

まとめ

Power Automate for desktop(PAD)を活用したExcel業務の自動化を成功させるには、データの識別が明確であることが不可欠です。
「一意のキーを設定する」「連番や識別コードを活用する」「複数の列を組み合わせてキーとする」 など、適切なデータ管理を行うことで、PADによる処理の精度を向上させることができます。
まずは、現在のExcelデータに一意の識別子があるかを見直し、自動化に適したデータ構造を整えましょう。