発注部門が「定期的な発注リスト作成に時間がかかっている」という問題を抱えていることは多いです。 この問題は、大量のデータをExcelで参照し、手動で作成するために発生しています。こんな場合に「Power Automate for desktop」を使うことで、発注リストの自動化が可能になります。本文では、発注リスト自動化のプロセスを解説します。
発注リストの自動生成
業務の概要
発注リスト作成後は、これを基に発注書を作成します。発注書にはリストの内容が正確に反映され、取引条件や納期の確認も含まれます。また、複数リストを統合して一括発注書を作成することで効率化やコスト削減が可能です。
発注リスト作成業務とは、「販売データ」や「在庫不足情報」などを基に、必要な商品とその数量を正確に計算し、Excelにまとめる作業です。具体的には、在庫の不足状況を示す情報を検索し、それを販売データと照らし合わせて必要数の計算を行います。計算結果は発注リストとしてまとめられます。このプロセスは、企業の在庫管理や仕入れ業務における重要な役割を果たします。
業務の問題
この業務は、一見簡単なように見えますが、実際は以下のような問題を含んでいます。
- 時間がかかる: 大量のExcelデータを参照し、手作業での計算は非常に多くの時間を要します。特に複数のファイルやシートを跨ぐデータ処理が必要な場合、作業はさらに複雑になります。
- 属人化する: Excelで処理できない場合、Accessなどのデータベースを使って独自に処理することになり、一部の担当者にしか対応できない属人的な業務になることがあります。これにより、担当者の不在時に業務が停滞するリスクが高まります。
- ミスの取り込みの可能性: 手作業は必然的にミスの発生率を高めます。特にデータのコピー&ペーストや計算式の設定ミスなどが発生しやすく、信頼性を低下させる要因となります。
- 作業者の負荷が大きい: 煩雑な作業は作業者の精神的および身体的負担を増大させ、結果として業務効率をさらに低下させる可能性があります。
Power Automate for desktopによる解決
Power Automate for desktopを使用することで、この業務を自動化できます。以下は具体的なプロセスの流れです。
- データの取得: 販売データや在庫不足データを基幹システムやBIシステムから取得するフローを構築します。このステップでは、自動化フローを設定し、毎日特定の時間にデータを抽出するようにスケジュールすることも可能です。データの正確性を保つため、必要に応じて事前の整合性チェックを含めることが推奨されます。
参照在庫データのダウロードから加工・保存までについてはこちらの記事で解説しています。 - 計算処理: 計算処理では、販売データと在庫不足情報を基に、必要な発注数を算出するプロセスを実行します。このステップでは、特定の計算ルールやビジネスロジックを適用します。例えば、安全在庫を基に発注量を調整したり、過去の販売傾向を元に発注数量を動的に調整することが含まれます。さらに、複数の条件を組み合わせてデータをフィルタリングし、無駄な発注を防ぐ仕組みも構築可能です。
- 発注リストの書き出し: 計算結果を新しいExcelファイルに書き出し、発注リストを生成します。このプロセスでは、ファイルの形式や保存場所、ファイル名の命名規則も事前に設定できます。さらに、必要に応じてリストにコメントや特記事項を自動的に追記することも可能です。
- 発注リストのメール送信: 作成した発注リストを関係者や取引先にメールで自動送信するプロセスを追加できます。この機能では、テンプレート化されたメール本文や添付ファイルを含む設定を行い、指定された時間に一斉送信することが可能です。これにより、発注プロセス全体がスムーズに進行します。
自動化の注意点
データ量が膨大な場合、フローが長くなる可能性があります。例えば、複数のデータソースを統合して処理する必要がある場合や、複雑な条件分岐を含む場合などです。そのため、以下の手法を用いてシンプルな運用ができるようにしてください。
- 各ステップを分割する:
- 各ステップとは以下のような処理単位を指します。
- データの取得: 必要なデータを各種システムやファイルから取得します。
- 計算処理: 必要な数量や条件に基づいた計算を実行します。
- 結果の書き出し: 計算された内容を指定フォーマットのファイルに出力します。
- 通知の送信: 必要な関係者に通知を送信します。
- 各ステップを独立したフローとして構築することで、1つ1つのフローがシンプルになります。例えば、「データの取得」ステップで特定のファイルが見つからない場合や、「計算処理」ステップで条件に合わないデータが含まれていた場合など、エラーが発生することがあります。このような場合でも、該当するフローのみをメンテナンスして再実行するだけで問題を解決できます。複雑さを避けるために、大きな自動化処理は分割して構築し、個別に対応可能な形にすることが大事なテクニックです。
- 各ステップとは以下のような処理単位を指します。
- 外部ツールを利用する:
- Power Automate for desktopだけの自動化にたよらず、データベースやExcelマクロなど外部のツールを効率的に利用して自動化を実現します。例えば、Accessを使用してデータを集約し、その後Power Automateでトリガーを設定する方法があります。また、Excelマクロを事前に作成しておくことで、複雑な計算やデータ整形を簡略化し、Power Automateでそのマクロを呼び出して実行する仕組みも可能です。これらのツールを別々に操作する場合、業務が属人化しやすくなるリスクがありますが、Power Automate for desktopを活用して一連のフローとして連携させることで、高度な機能を維持しつつ属人化を防ぎ、より効率的で安定した運用が可能になります。
自動化のメリット
- 効率化: 作業時間が大幅に短縮します。例えば、従来数時間を要していた手動のデータ処理が数分で完了するようになります。これにより、発注のスピードが向上し、必要な商品がより迅速に仕入れられるため、在庫圧縮にも繋がります。定型的な手順を自動化することで、リードタイムを短縮し、在庫の無駄を削減することが可能です。
- 精度の向上: 手作業のミスを削減できます。データ入力や計算の際に発生しがちなヒューマンエラーが自動化によって排除され、より正確な結果を得ることができます。さらに、無駄な在庫を削減することで、在庫コストを抑え、効率的な在庫管理を実現できます。
- 属人化の排除: 作業プロセスが明確に定義され、自動化されることで、特定の担当者に業務が依存しなくなります。これにより、担当者の不在時にも業務が滞ることなく進行し、組織全体の生産性と業務の安定性が向上します。
まとめ
発注リストの自動生成は、業務の効率化に大きく貢献します。「Power Automate for desktop」の活用により、日常業務の自動化を実現し、作業者の負荷を軽減することが可能です。この技術を活かして、業務改善に積極的に取り組み、より効率的で生産的な環境を築いてみてください。