RPAシナリオ設計の第4回です(プログラミング的思考の動画を分割したのでVol.6となっています)。「成功のカギはRPAシナリオ設計にあり」ということで、RPAシナリオ設計の意味・メリットについてお話しています。
成功のカギはRPAシナリオ設計にあり|RPAシナリオ設計入門Vol.6
成功のカギはRPAシナリオ設計にあり
動画の内容を文字で読みたい方は、こちらをどうぞ!
プログラミング的思考とは
ここまで、「RPA失敗の原因の多くは、ソフトウェア開発の経験がない人が、突然RPAというソフトウェアの開発を行うことになったから」であり、成功するには「ソフトウェア開発の基礎であるプログラミング的思考について学び、設計書を作成できるようになる必要がある」と述べてきました。
前回「プログラミング的思考とは」でプログラミング的思考について解説しましたが、「難しい」「何を言っているのかよくわからない」と感じた視聴者さんもいるかもしれません。
しかし、安心してください。
これから解説するRPAシナリオ設計書を作成する手順に従うことで、「プログラミング的思考とは」で解説したプログラミング的思考が自然と鍛えられる仕組みになっています。
では、始めます。
RPAシナリオ設計書の作成手順
RPAシナリオ設計書は①業務シナリオ② RPAシナリオ③シナリオ設計図という、3つのドキュメントにより構成されます。
①~③は作成する順番を示しています。
①業務シナリオと② RPAシナリオは、③シナリオ設計図を作成するためのステップとして作成します。
前のステップに戻って、再検討することもあります。一度で完璧な設計を行うことは不可能です。各ステップを前後しながら推敲を重ねることで、よりよい設計となります。
①業務シナリオ② RPAシナリオでは、実務者でも馴染みやすい箇条書きでシナリオを作成し、③シナリオ設計図で記号を使った設計図を作成します。
この過程で具象的な「業務」を抽象化し、「設計」へと導くことができます。
RPAシナリオ設計と抽象化
図は「プログラミング的思考の要素2「抽象化」」で使用した抽象化のイメージです。
実務者には馴染みのない「プログラミング的思考」の概念を完全に理解しなくても、設計することができることがわかります。
一歩一歩手を動かしながら実践することで、結果的にプログラミング的思考を使った設計ができるようになります。
RPAシナリオ設計書は業務をシナリオへ変換するツール
RPAシナリオ設計書を作成する意味は、プログラミング的思考を身に付けるためだけではありません。
プログラミング的思考を使ったRPAシナリオ設計書は、業務をシナリオへ変換するためツールとなります。
人間が行っている「業務」というあいまいな活動を、①業務シナリオ② RPAシナリオ③シナリオ設計図という3つのステップを踏むことで、シナリオに変換します。
シナリオ設計図の表現は、おおよそ、そのままの形でシナリオの実装に使用できます。
シナリオ設計図はシナリオ開発環境でも描けるか
UiPathを含む多くのRPAツールは、フローチャートのイメージでシナリオ開発ができる開発環境を提供しています。そのため、フローチャートを用いてシナリオ設計図を作成する必要はないと考える方も多いのではないでしょうか?
しかし、シナリオ開発環境はあくまで「開発」のためのソフトウェアです。
絵としてフローチャートを眺め、部分的に入れ替えたり、まとめたりする、といった設計作業には向いていません。
設計以外の作業に手を取られ、設計に注力することが難しくなります。
RPAシナリオ設計書は自動化された業務の理解に必要
業務を自動化すると、時間の経過とともに業務知識が失われがちです。業務を行う目的も見失われて、ただシナリオを実行することだけが目的と化してしまうこともあります。
自動化された業務を人間が理解するためにも、RPAシナリオ設計書は大変有効です。
RPAシナリオ設計書がない場合、目的を含めた業務内容をシナリオから直接読み取るのは困難です。シナリオには、オートメーションに必要な情報のみが記述されているからです。
RPAシナリオ設計書には、「このシナリオは誰が何の目的で開発したのか?どのような条件のもとで、どのような動作をするのか?」といった付属情報が盛り込まれています。
最終的に作成するシナリオ設計図だけを残しておけばよいわけではありません。業務シナリオが持っている業務の目的や、人間が行っていたときの業務手順などの情報が、理解の手助けになることもあります。
RPAシナリオ設計書は人間と人間との共通言語
RPAシナリオ設計書には、もう一つ大切な役割があります。「人間と人間との共通言語」です。「人間と人間は言葉で伝えればよいではないか?」という視聴者さんもいるでしょう。
しかし、言葉だけで、シナリオの作成目的、動作の前提条件、例外や変化の対応方法など、シナリオに関する様々な要素を伝えることは、ほぼ不可能です。
伝える側、受け手側の双方に高い言語スキルがあったとしても、足りない部分が出てきます。足りない部分は受け取る側の想像で補うことになり、誤解が生じる土壌が生まれます。
ほとんどの場合、伝える側、受け手側は異なる立場、異なる知識、異なる前提条件のもとコミュニケーションしています。RPAについての知識レベルも異なるでしょう。
そうなると、言葉だけで伝わるはずはありません。
RPAシナリオ設計書で伝えることで、過不足なく全体像を伝えることが可能になります。
受け手側も言葉を聞くことに集中しなくていいので、考える余裕ができます。適切な質問、適切なアドバイスが生まれてきます。
RPAシナリオ設計書の作成は面倒?
RPAシナリオ設計書を作成するには工数がかかります。特に慣れていない間は、1本のシナリオ設計にも1カ月以上かかるかもしれません。
しかし、それを補って余りあるほどのメリットがあることが、実践することでご理解いただけるでしょう。
短期的な成果にとらわれず、長期間の成果を得られることを選びましょう。
一度、シナリオを開発すると少なくても数年間は利用され、その間に幾度となくメンテナンスすることになります。他の人に引き継いだり、別のRPAツールに乗せ換えたりするかもしれません。
長期間の成功を得るために、RPAシナリオ設計をしっかりと行いましょう。
また、RPAシナリオ設計書を作成するときに身についたプログラミング的思考は、一生使える最強のスキルとなります。それだけでも、RPAシナリオ設計を行う意味があるでしょう。
参考書籍
設計について体系的に理解したい方は、僕の書籍「実務者のための失敗しないRPAシナリオ設計入門」をお読みください。