RPAの要件定義に必要なデータフロー図の書き方を解説します。サンプルをもとに説明するので是非お読みください。
それではどうぞ!
RPAの要件定義|データフロー図の書き方
図1のサンプルをもとにして、RPAの要件定義に必要なデータフロー図の書き方をわかりやすく解説します。
図1:データフロー図サンプル(卸業販売管理システム)
図1のデータフロー図は卸業の販売管理システムを表しています。流れを簡単に説明します。
- 顧客から受注したら、受注管理簿に受注データが書き込まれる。
- 受注管理簿から出荷予定を取り出し、出荷指示を行う。出荷指示書が出力される。
- 出荷指示書をもとに出荷が行われ、顧客に商品と納品書が送られる。同時に在庫台帳と売掛台帳にデータが書き込まれる。
データフロー図の5つの要素
データフロー図は表1の要素を使用して作成します。
表1:データフローの要素(Yourdon & DeMarco記法)
データストアは2つのシンボルを載せていますが、一般的には上の横棒2本のシンボルを使います。システム開発に利用するデータフロー図なら、データベースのシンボルであるドラム型アイコンの方がなじむでしょう。適時使い分けてください。
境界線は正式なYourdon & DeMarco記法ではありませんが、システムの範囲を明確にするために便利なので加えています。
また、データフローはモノや伝票など実体がある場合は実線、デジタルデータの場合は点線にするといった使い分けをすることで、より便利なデータフロー図になります。
学会に出すような正式な図を作るわけではないので、「完璧な使い方」にとらわれる必要はありません。ただし、あまりいいかげんに記述すると他の人が見ても理解できないものになるので、基本だけはおさえておくようにしましょう。
データフロー図の3つのルール
データフロー図を書くときには、いくつかのルールがあります。ルールがわかってくると、業務と自動化の関係も理解できるようになってきます。
1)プロセスには入力と出力が必要
2)データストア同士はデータフローで結べない
3)必ず名称を付ける
(ルール1)プロセスには入力と出力が必要
プロセスは担当者やコンピュータによって遂行される行為を示し、受け取ったモノや情報を加工する働きをします。
そのため、プロセスには必ず「入力」と「出力」が必要です(表2)。「入力」や「出力」のないプロセスは存在できません。
これは、業務は「入力」→「加工」→「出力」で成り立っていることを示しています。
表2:プロセスには入力と出力が必要
(ルール2)データストア同士はデータフローでむすべない
データストアはモノやデータを保管しているだけです。モノやデータは自律的に移動できませんので、かならずプロセスを経由しなければなりません(表3)。
表3:データストア同士はデータフローでむすべない
(ルール3)必ず名称を付ける
データフロー図の要素(プロセス、外部実体、データストア、データフロー)には名称を付けなければいけません。特にデータフローには必ず名称を付けてください。
プロセスに名称がついていなくても、データフローの名称が付いていれば、処理内容を推測することはできます。
逆にデータフローに名称がなければ、どのようなデータが受渡されるのかを推測するのは困難です(図2)。図1と見比べてみてください。
図2:データフロー図サンプル(卸業販売管理システム)のデータフローに名称がない場合
データフロー図の注意点
(注意点1)業務フローではありません
データフローの説明に書いていますが、あくまでデータの流れを矢印で表したものですので、「順序」や「働きかけ」とか「変化」を表すものではありません。
順序を示すのは「業務フロー」です。業務フローもRPAの要件定義に必要ですが、データフロー図はその前段階です。
(注意点2)粒度があります
データフロー図には粒度(データの細かさ)があります。詳細まで書くと、一覧できる大きさに収まらなくなるので、最初は大雑把な粒度で書きます。
大雑把な粒度の場合、「データの発生源→プロセス→データの出力先」がそのまま一つの業務とは限らない点に注意してください。
粒度を細かく落としていくことで、最終的に自動化できる単位の業務となります。
データフロー図を書けば、すぐに自動化できる業務がわかるというわけではない、ということをご理解ください。データフロー図は、RPAの要件定義のまず第一歩、というステージです。
データフロー図の例
これらを注意して、もう一度図1を見直してみてください。再度載せます(図1)。絵として眺めて、ある程度の美しさがあるようにしましょう。
図1:データフロー図サンプル(卸業販売管理システム)
まとめ
RPAの要件定義に必要なデータフロー図の書き方を解説しました。
データフロー図を書くことで、業務をオペレーションではなくデータの流れで把握することができるようになります。手を動かさないと理解している気になるだけですので、実際に書いてみてください。
また、データフロー図はとても簡単なので、IT技術者だけでなく、実務者や経営者も理解できる図です。
データフロー図を使ったRPAの要件定義は関係者全員の共通認識を作るために有効な手段ですので、ぜひ活用してください。
データフロー図を書くツールはエクセルでもパワーポイントでも構いません。
僕はVisioを使って書いています。Visioは作図専用のツールですので、最初からデータフロー図を書くための要素が用意されています。
そのため、作図の速さと品質が向上します。
本格的に業務自動化に取り組みたいという方は、Visioのような作図専用のツールを購入することをおすすめします。
以下の記事で業務分析を身に付けるために役に立つ書籍を紹介しているので、併せてお読みください。