会社なんか辞めて独立したい。そして家にひきこもって仕事したい。でも失敗するんじゃないか?
と不安に思っている人に断言します。「必ず、失敗します」と。
ひきこもり体質なのに独立するような人は、残念ながら失敗することが決まっています。
なぜ断言できるかというと、僕がそうだから。
2010年、僕は子供の病気のためサラリーマンを辞めて、何の準備もないまま個人事業主として独立しました(ここらへんの経緯についてはプロフィールで書いています)。
独立したのは「家庭の事情」という理由もありますが、根本は「独立したかった」からです。
なぜなら、
- 会社に行きたくない、通勤したくない
- 1人で家で仕事したい
- あいさつとか人づきあいも苦手
- 収入を増やしたい
といった考えが常にあったからですね。
そんな人間が「エイヤっ」で、独立したわけですが、みごとに失敗の連続!!
でも、なんとか踏ん張って、12年たちます。
この記事では
- 独立してどんな失敗をしたのか
- 独立する人が必ず失敗する理由とは?
- 失敗しながらも、どうやって生き残ってきたのか
ということをまとめました。
かつての僕のように、サラリーマンをやりながら悩んでいる、ひきこもり体質の人の参考になればいいなと思っています。
長文ですが、どうぞ。
本業以外が苦手で失敗
最初に「僕が独立してどんな失敗をしたのか」を紹介します。
読んでいくと、「失敗する理由」がわかってくると思います。
本業以外の事務作業が苦手
独立して個人事業主になるとサラリーマン時代より、やるべきことが格段に増えます。
- 開業届け
- 社会保険の手続き
- 毎月の請求書の作成
- 領収書の保管
- 確定申告
開業届けと社会保険の手続きは、1回やればいいだけですが、請求書の作成は毎月です。
多くの場合、作業報告書も提出しなくてはいけません。
1番めんどくさいのが「確定申告」。
ともかく、こういう事務作業が大嫌い!
そして、事務作業のほかにも、もっと不得意なのが「契約」……。
契約ごとが苦手
独立すると、契約も自分で取って、内容を決めないといけないわけですが、こういうのも不得意でした。
独立したての頃は、サラリーマン時代に勤めていた会社と業務委託契約を結んで、仕事をもらっていました。
12年前は今とは違って「業務委託の人が会社の仕事をする」ということは、とても珍しいものだったんですよ。
くわえて、「リモートで仕事をする」ということも、ほとんど誰も聞いたことがない状態。
だから、
- 委託費用は出社したときの時間で計算する
- 在宅で仕事していることもわかっているから、その分、サラリーマン時代より時給を上げる
といった契約を結んでスタート。
こまかい契約内容を交渉するなんてメンドウなことはしません。
いざ始めると、あまり出社できない(したくない)ので、収入が少ない!!
お金を稼ぐために、家庭のことは妻や親せきにサポートしてもらいながら、なるべく会社に出社するように切り替えて、労働時間を増やしました。
それでも、収入はサラリーマン時代の6割くらいになってしまいました。
その上、年金や保険もすべて自分持ちです。
ひきこもりたくて独立したのに……。
収入を増やしたかったのに……。
その後、収入は契約先の会社の増加とともに増えましたが、最初はきつかったです。
引越しでも苦労
収入が少なかったうえ、契約などが苦手だから、引越しにも苦労しました。
これは、独立して1年くらいして、引越しをする必要に迫られたときのエピソード。
子供の病気の関係で、病院の近くに引越しすることになったので、急遽、引越し先を決めました。
そうすると、最後に「保証」みたいな話が出ますよね。
「あなたはちゃんと家賃払えますか?」ってやつ。
僕は独立したばかりだから信用がないし、収入も激減しているから、大家さんが直前になって渋り出したようで…。
でも、こっちは前の家の契約を解約して、引越しの準備もしているわけですよ。
保証会社を付けた上に、大急ぎで妻の親戚に頼んで保証人になってもらって。
ギリっギリで承認が下りて、なんとか引越しすることができました…。
プライドが高くて世間知らずで失敗
あなたは「独立したら少しかっこいい」と思っていませんか?
僕はどこかでそう思っていました。
それに、
- ITエンジニアとしての技術・知識がある
- 現場で10年以上やってきた経験がある
- 複数の会社を渡り歩いてきたから、他社でも通用することがわかっている
- 自分は複数社の契約をとって、まわしていける
と、(根拠のない)自信がありました。
でも、世間はそんなに評価してくれません、、ね。
見知らぬフリーランスに技術力や特殊な能力があるかどうかなんて、わかりようがありません。
そして、僕には、
- 立派な肩書
- 立派な資格
- 大企業に勤めていた経験
- 仲間
これの、どれもなかったんです。
あるのは、『根拠のない自信とプライド』だけ。
その結果、どうなったのか?
2つほど、失敗例を書きます……。
営業して失敗
「個人事業主でも営業力があれば仕事を取れる」という話を聞くことはありますよね?
僕も「営業して仕事を増やそう!」と思って、活動をしてみたことがあります。
まだ、RPAブームが訪れる前の話です。
(RPAとはパソコンの自動化ツールです。詳しくは「RPAとは」をお読みください)
僕はそれまでの知識と経験を活かして、「RPAのコンサルタント風の仕事をしたい」と思って、営業をかけたわけです。
そしたら、反応が何社もありました!!
実際に会って話をすることもあったし、仕事もしました。
でも、お金を得ることはできませんでした……。
そりゃあ、そうです。
僕から営業をかけられた会社の方からすると「営業してくるくらいだから仕事に困っているんだな。何かできるんなら使ってやろうかな」という立場になるわけです。
そうなると、僕は「これくらいできるんだぞ」とアピールする立場になっちゃいます。
そして、数カ月、「タダ働き」です。
「すごいね!言うだけのことはあるね!」と認められたのですが、提案されたのが、システム・エンジニアの仕事……。
こちらは、「コンサルティングしてやろう」と(勝手に)思っているんだから、すれ違い、です。
今思うと、僕は自分から営業かけておきながら、「仕事ください」じゃなくて、「コンサルティングしてあげる」くらいの気持ちなんだから、そりゃあ、うまくいかないですよね(笑)
企業とプロジェクトをしても失敗
ある縁があって、某大手IT企業のサービスの開発プロジェクトに参加したことがあります。
ちなみに、そのサービスは今は存在していません……。
僕は、その大手IT企業の製品を現場で活用していたので、経験を買われて、偉い人のつながりで参加したんです。
「こういうサービスが作れたら、絶対ニーズがある!僕が現場で欲しかったサービスだから」と、はりきって臨みました。
で、いざプロジェクトに入ったら、もうそこには「偉い人(経営層)」はいないわけです。
「あとは技術者同士でうまくやって」っていう感じです。
企業側のプロジェクトメンバーにしたら「なんか、役員から紹介されたけど、うさんくさいフリーランスがプロジェクトに入ってきた。こいつに何ができるんだ?」っていう感じ。
それからは毎回、僕の実力をいぶかしむ5人くらいを相手に、1人でいろいろとネタを出していく地獄のようなミーテイング。
一流ITコンサル出身者に「コンセプトは?」「顧客提供価値は?」「ニーズがある根拠は?」みたいなことを詰められる…。
「あなたの存在価値はなに?なんでプロジェクトに参加してきたの?」と責められているようで、恥ずかしいやら悔しいやら。
僕は僕で「現場も知らんのに、偉そうに理論ばっかり振りかざしてアホちゃうか。どんなサービスがあれば、現場が喜んで買うか感覚でわかっとる」というのが本音なんで、バチバチ!!
かといって、僕に相手を説得して、プロジェクトを引っ張っていくような力はなく…。
意見は合わないまま、プロジェクトメンバーが減っていく、変わっていく。
最後に、「売れた時の取り分はどうするか?」という契約でもめて……。
大きな企業相手に個人で契約交渉するのは、本当に大変。
これはかなりのストレスでした……。
どうにかこうにか、僕がサービスを形にして、リリースまで持って行きましたが、たいして売れずに終了。
今思うと、僕のアイデアは間違ってなかったとは思うけど、売れるような「商品」になってなかった。
「企業が販売するサービスとは何か?」といった「常識」も知らなかったんですよね。
途中からは「現場を知らないIT企業のエリートをねじ伏せたい」くらいの気持ちしかなかったから、愚かですよね。
プライドと自信だけはある、ひきこもり体質なんだから、企業とうまくチームを組めるわけもなかったんです。
人づきあいが苦手で失敗
独立して怖いのが、「突然、契約を切られる」ってことです。
最近も「コロナ禍だからコスト削減のため」という理由で、
長年付き合いがあった会社に、あっさり切られました。
契約当初は友好な関係が築けていたとしても、時間とともに相手側の担当者が変わっていき、知っている人が辞めていくんです。
担当者が変わるたびにあいさつにいって、関係を作ったりすればいいのでしょう。
でも、そういう人づきあいができなくて、独立しているのだから……。
お酒も止めたから、「飲みにケーション」もない。
基本的に在宅で仕事するので、仕事に関係のない話も、ほとんどしない。
そのうちに、委託される仕事も減っていき、最後は契約終了を告げられたわけです……。
クビを言い渡す社員とは、ほとんど面識がないので、実にあっさりしたものです。
その瞬間、年間百万円以上の収入があっという間になくなるんです。
「人づきあいが得意なら、こういうリスクも減らせるだろう」と思っても、できないんですよね。
独立する人が必ず失敗する理由とは?
ここまで、いろいろな失敗談を読んでいただきました。
- 本業以外が苦手で失敗
- プライドが高くて世間知らずで失敗
- 人づきあいが苦手で失敗
上記の失敗の要因は共通しています。
おそらく、独立するひきこもり体質の人には共通した特徴だと思います。
2つ特徴をあげます。
気が弱いのに、プライドが高い
失敗の要因の1つ目は、「ひきこもり体質で気が弱いのに、プライドが高いから強気に出てしまう傾向」があるということ。
プライドに見合った「押し出しの強さ」とか、「交渉のうまさ」があればいいのですが、それはない。
交渉ごとでも、気が弱くて押されてしまうか、逆に強気に出過ぎてしまう。
ちょうどいいところで、調整できない傾向があります。
人づきあいが苦手なのに、人づきあいが必要
失敗の要因の2つ目は「人づきあいが苦手」ということ。
独立したら、個人で生きていくことになるので、人づきあいが必要となります。
むしろ、サラリーマンのときよりも。
「人づきあいが苦手」「在宅で引きこもって仕事したい」
だから独立したのに、人づきあいをしないといけなくなる。
だから、失敗するんです。
だから、必ず失敗する
「気が弱いのに、プライドが高く、人づきあいが苦手」
そりゃ、失敗しますよね!?
でも、「こういう人こそが独立する」んですよ。
つまり、最初から「独立する人が失敗することは確定している」わけです。
独立するべくして独立して、失敗すべくして失敗する。
成功する人は、サラリーマンでも成功する。
独立しても、仲間と起業したりして、社長同士のネットワークを作ったりして、成功するのでしょう。
さてさて、ひきこもり体質なのに、独立してしまった人はどうなるのか?
選択肢は2つだけ。
- 失敗に耐え続けながら踏ん張る
- 苦手なサラリーマンに戻る
どちらか、です。
「自分を変えて、人づきあいが得意になって成功!!」
みたいなことって、、ないと思うんですよね。
失敗しながらもどうやって生き残ってきたか
最後に
失敗だらけのなか、どうやって今まで生き残ってこれたのか?
ということを書きますね。
目の前の人に役立つように技術・知識を提供する
独立した当初は、契約先は1社だけ。
営業もできないから、契約先が増えることはありませんでした。
でも、何年かすると契約先が複数になりました。
なぜ、契約先が増えたのか?
答えは簡単です。
最初の契約先の会社から転職した人が、転職先の会社でも僕に声をかけてくれたから
僕は上司のご機嫌をとったりするのは苦手です。
でも、
- 実務の現場の人と話をするのは好き
- ニッチで役にたつソリューションを作ることが得意
だから、実質的に役に立つことを、惜しまず提供しました。
それが、よかったのでしょう。
契約先を絞らない
契約先が増えた後は、1社に絞らなかったのが良かった!
「契約をうちの会社1本にして、もっと稼働時間を増やしてくれるなら、倍の料金を払うよ」
と言われたこともあったけど、かたくなに断りました。
お金に惑わされないで、複数社をキープすることが大事です。
1社に絞ってから、契約を切られたらおしまいですから。
徹底して自分の仕事を自動化する
個人で生きていくとき、
売れる商品は「時間」のみ
なんです。
どんなに能力が優れていても、時給があがるだけ。
だから、生き残っていくコツは、これだけです。
少ない実働時間で、最大限の成果を提供する
そのためには、下記が大事!!
- 仕事は最大限、自動化する
- さらに良い方法は「完全自動化」すること
たとえば、月初の売上集計レポートを出す仕事があったら、
- 会社の基幹システムやグループウェアからデータをダウンロード
- データをデータベースに格納
- データベースから過去データも含めて取得して加工
- Excelで帳票を作成
- 帳票をメールやグループウェアで配信
上記をすべて自動化して、スケジュールを組んで実行してしまうわけです。
これで、0時間で成果物が提出できる!
これを積み重ねることで、複数の会社のたくさんの仕事を請けることができるようになってきました。
自動化技術を自分以外にも応用する
自分の業務を自動化したので、これを契約先の会社の業務にも応用しました。
たとえば、発注業務の自動化です。
(こういった例は「商品補充業務のRPA化事例【小売業】」として記事にしています)
自動化のインフラを運用することを仕事にする
仕事を自動化するためには、そのインフラ(基盤)が必要です。
- サーバーやパソコンなどのハードウェア
- ソフトウェアと各ソフトウェアの連携
- 全体を管理する「運用管理ツール」
などです。
これらを構築して、動く状態をキープすることを仕事としました。
(こういった技術については、僕の著書「オープンソースで作る!RPAシステム開発入門 – 設計・開発から構築・運用まで」で書きました)
教育を仕事にする
業務自動化ができるようになったら、次は
自動化開発する人の教育
も仕事にしました。
業務を自動化して、運用する方法を契約先の社員に教えました。
これによって、なおさら僕の仕事の工数は減りました。
工数は減ったのですが、逆に、僕の仕事の価値は高まりました。
ただのプログラマーだったのが、だんだん「先生」になってきたからです。
ひきこもり体質でも、自分が得意なことを教えるときは、人前に出ることも苦痛じゃないですね。
会社「完全自動化研究所」を作る
RPAを知ってからは、業務自動化に集中することにして株式会社を作りました。
これで
- 個人事業主として活動しているより、社会的信用が高まった
- 契約を結んでもらいやすくなった
と実感します。
「完全自動化研究所」という名前にしたので、「何をやっているか、わかりやすい」「面白い」ということで、連絡をいただけることも増えました。
ノウハウを公開する
会社のホームページも自作し、業務自動化のノウハウを公開しました。
その結果、、
翔泳社さんから声をかけていただき、初の書籍「オープンソースで作る!RPAシステム開発入門 」を上梓することができました!!
そこからほぼ毎年、計5冊の本を出させてもらいました。
今でもいただくお仕事は、ほとんどホームページ経由です。
Twitter(@hiroyuki_kosai)でも情報発信を始めたので、Twitter経由でもお仕事につながったことがあります。
結局、自分の弱みを活かした
「失敗しながらもどうやって生き残ってきたか」をまとめると、
- 目の前の人に役立つように技術・知識を提供する
- 人の縁で少しずつ仕事を広げる
- 広がった仕事を育てる
- ネットで情報発信する
というステップですね。
今では、独立したときに妄想していた下記のような状態になっています。
- 会社に行かず、自宅で好きな仕事ができる
- 複数の会社と契約できている
- 人づきあいは最低限でいい
- 営業はしない
- 収入がサラリーマン時代より増える
「なにがよかったか」を振り返ると、、、
自分の弱みを活かした
ことが、よかったのだと思います。
気が弱いのに、プライドが高いことを活かす
意識して、
下請け仕事はしない
ようにしました。
顧客を抱えているIT企業と協業すれば、営業しなくても仕事を増やすことができました。
でも、協業といいつつ、実質的には「下請け」になります。
(結局、作る人よりも、お客様を連れてくる立場の方が強い!!)
「誰かの下について、仕事をもらう」ことはプライドがジャマしてうまく行かない。
今でも、直接契約してくれるお客様とだけ仕事をしています。
そして、自分で情報発信して、
「先生」になれる方向
を意識して動きました。
人づきあいが苦手なことを活かす
人づきあいが苦手で、営業でも失敗したので、
営業しなくても仕事が増えること
を意図的に企みました。
仕事内容も
家でも1人でできること
を、常に考えています。
僕がいなくても、仕事が回る。
でも、僕が裏で仕組みを作って、動かしている。
という状態を作れば、人づきあいをしなくても、仕事になります。
まとめ
この記事では、「独立開業すると必ず失敗します【ひきこもり体質の人限定】」というテーマで、
- 独立してどんな失敗をしたのか
- 独立する人が必ず失敗する理由とは?
- 失敗しながらも、どうやって生き残ってきたのか
ということをまとめました。
まとめてみて、思うのは、
僕は思った以上にダメな人間だなぁ
ということ。
でも、
- ダメ人間だからこそ、勢いで独立できた
- ダメ人間な部分をカバーしようとして、何とかしてきた
というわけです。
まだまだ、安定して生きていける身分じゃないし、
一生、安定しない
でしょう。
これからも、あがいて、いろいろな道を模索する日々です。
それが、独立開業のだいご味でもありますからね。
こんな話が、あなたの参考に少しでもなったなら、幸いです!
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